蛍取りの記憶
西日本や東海地方などから、蛍の便りが聞こえるようになった。
間もなく、東北地方でも見られるようになるだろう。
蛍といえば、幼い頃に母と兄と三人で行った蛍取りの記憶が蘇ってくる。
確か、私が小学校1年生の頃だったと思う。
夜の8時ごろ、家から15分ぐらいのところに小川(用水路)があり、田んぼには稲が植えられ、蛙も鳴いていた。
その中を、
「ほー、ほー、ほーたる来い。」
の歌を歌いながら、蛍を探し始めた。
前方に蛍が多く飛んでいるのが見え、
近くにもいくつか飛んでいた。
箒を使っていくつか蛍を捕まえていると、
「ちょっと。あれ、見てみ。」
と母が指さした。
見ると、30mぐらい先の小川のあたりを、
ずいぶん大きな光が漂っている。
まるで白熱灯のような光は、蛍のような点滅もなく、
高く上がったり、人の頭ぐらいのところを漂ったりしていた。
夜に光る生き物は蛍なのだから、
「大きな蛍だったんじゃないか?」とか、
「あんな大きなのは見たことないなあ。」
と言い合いながら。見ていた。
どのくらいの時間っだったのか覚えていないが、
30秒から40秒ぐらいだったのかもしれない。
やがて木の影にでも入ったのか、
見えなくなった。
虫かごに何匹とったか覚えていないが、
母親に
「このぐらいでいいら?、帰らまいか。」
と、言われて、家に帰った。
あの光は一体何だったのだろうか?
怖いというような気持ちはなかったように記憶している。
それから何年も経ってから、
球電というものがあるということを、
学校の本で見て知った。
雷雨の後などによく見られる現象であるけれども、
晴れている時に、遠くで雷が鳴っている時には見られることもあるそうだ。
ただ、まだまだわからないことが多く、
専門家の間でも研究途上のようだ。
私たちが見たものが、
球電であったのか、そうではなかったのかは、
今となってはわからない。