岩手県北上市川岸 黒沢尻安倍館
東北新幹線北上駅から東に出ると、川岸(かし)の安倍館公園があります。北上川の西岸です。
11世紀安倍氏の柵の一つ。黒沢尻五郎正任の柵して陸奥話記に記される柵で、川岸の安倍館に所在したと考えられています。発掘調査では中世城館の堀や竪穴建物跡、天目茶碗などの陶器が確認されて、中世和賀氏の家臣黒沢尻氏の居館であることは確かですが、11世紀安倍氏の黒沢尻柵については、よくわかりません。この地は北上川沿いの微高地上に立地しており、当時の黒沢川(現在の広瀬川)河口に接していることから、柵もこのあたりの微高地上に存在したものと推定されます。
安倍館西側の堀だけ、公園として保存されています。大半は区画整理で宅地化されていますが、館が存在した範囲は、現在でも心持高くなっています。
藩政時代、盛岡藩の川湊が存在しました。御蔵番所を囲む堀は、中世黒沢尻安倍館の堀が踏襲されています。
盛岡城下から下った船の積み荷は、この黒沢尻湊で大きな船に積み替えられて、河を下っていきました。
安倍氏の黒沢尻柵も、この河湊と密接な存在だったと考えられます。